なぜ報道がなかった?

なぜ報道がなかった?

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なぜ報道がなかった?

一連の食品偽装表示事件を通して、明らかになったこととして、一連の偽装表示は一部の悪質な業者だけではなく、広く業界ぐるみで行われている可能性が高いということです。

一言で言えば「業界内で知らぬ者はいない」という事実です。

「可能性が高い」と書いたのは、全ての業者に立ち入り検査を実施したわけではないからですが、この原材料偽装表示、産地偽装、賞味期限偽装などは、俗に言う「トンデモ本」と呼ばれる本の中でセンセーショナルに取り上げられていたり、あるいは食品安全を考える評論家や市民団体の発行する地味な本で紹介されてきただけでした。

最近になって「偽装は30年も前から行われていた」という表現が飛び出していますが、逆に言えば30年もの間、何故発覚しなかったのかという疑問が沸いてきます。

これには、BSE事件を契機として消費者の食品安全に関する意識が高まってきたことも一因でしょうが、もっと幅広く見れば、日本の雇用体系の変化やメディアの自主規制などが挙げられます。

まず、日本の雇用体系の変化についてですが、従来、日本独自の雇用体系として終身雇用制が採用されてきたことは周知のとおりです。

終身雇用とは、ゆりかごから墓場まで会社が面倒を見ると言うことですから、会社自体が一種の家族意識を持ちます。

そのため、原材料の偽装が行われていたとしても、「社外秘だよ」と言われれば、親方である会社に背く社員は滅多にいません。

自分の「家族」である会社の首を絞めるわけにはいかないのです。しかし、バブル崩壊とその後の不況、そして外資系企業の参入により終身雇用制が崩壊し、会社は家族ではなく単に金を稼ぎに行くところに成り果てました。

また、いわゆるリストラによって一方的に解雇される人が増大し、会社に不満を持つ人が多くなってきたわけです。会社への復讐として最も効果的なのは、不正行為の密告です。

かくして、あちらこちらで不正が発覚するようになったということです。

なお、密告については、「公益通報者保護法」(平成16年法律第122号)が施行され、不正を通告した人が不利な取り扱いを受けないよう保護される制度ができました。

しかし、既に退社している人は別として、現在会社に在籍している人が不正行為を通告した場合、この法律で解雇や減給などの不利な取り扱いを禁止しても、左遷、実質的な降格などを受けるリスクは残っています。

そこで、さらに不法行為にとどめを刺すべく「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(平成19年法律第22号)が施行されました。

この法律は直接食品製造販売業者や不正の通告者を規制ないし保護するものではありませんが、同法第9条において

「特定事業者(中略)が特定業務に関し組織的犯罪処罰法第十条の罪(中略)に当たる行為を行っている疑いがあると認められる場合においては、速やかに、政令で定めるところにより、政令で定める事項を行政庁に届け出なければならない。」

として、犯罪行為を知った者に届け出の義務を課しました。

2007年に施行されたばかりの法律ですので、どのように運用されるかはまだわかりませんが、この法律で言う「特定事業者」には、農協、漁協なども含まれており、今後、悪質な食品偽装により不当な利益を得ている会社には、法の鉄槌が下される可能性があります。

続いてメディアの自主規制についてです。

テレビ、雑誌、新聞などのメディアのスポンサーには、かなりの比率で食品会社が参加しています。このため、例えばあるバラエティ番組のスポンサーに、どこかの食品会社が参加しているとして、もしその会社で食品偽装表示が発覚した場合、その番組で大々的に特集を組むわけにはいきません。そんなことをしたら、間違いなくその会社はスポンサーを降ります。

その番組だけじゃなく、提供している全ての番組のスポンサーを降ります。そうなってはテレビ番組が成立しません。

近年、メディアがバッシングしている食品偽装表示の会社は、2001年の雪印を例外として、どの会社、店もテレビ番組を提供しているような会社ではないことを見れば明白です。

しかし、マスコミがいくら自主規制しても、インターネット社会のほうは黙っていません。

今後は、不正告発や犯罪行為届出などによって、食品業界は世論の強い監視の下に置かれ、スポンサーに担がれたマスコミ側が火消しに回るなどということが起こってくるのではないかと思われます。

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